去年(2025年)の夏のことです。
はじめてあの土地に立ったとき、まず目に入ってきたのは、ずらりと立ち並ぶ庭木と、その足もとで育つミョウガでした。背中には、夏の太陽の熱。けれど木陰に一歩入ると、空気がひんやりと変わるのが、肌でわかりました。高く伸びた草をかき分けて奥へ進むと、青い草の匂いが立ちのぼってきました。
きれいに整えられた畑ではありません。十年以上、人の手が入っていなかった土地です。鹿やイノシシが通り、草が伸び放題に伸びていました。でも私には、そこが「ほったらかされた場所」ではなく、「いろんな生きものが、ずっと暮らしてきた場所」に見えたのです。
草だらけの畑が、宝探しに見えた
少しだけ、ここに至るまでの話を。
私はそれまで、隣の駅にある貸し農園で、二年ほど野菜を育てていました。住まいからは遠かったのですが、通える距離でしたし、近くに気のおけない畑仲間がいてくれたことが、はじめの一歩のハードルをずいぶん下げてくれました。
正直に言うと、私はもともと、家庭菜園にも農業にも、まったく興味がありませんでした。工場で作るように、単一の作物が整然と並ぶ畑。むき出しの土。人の都合で、雑草を「敵」として排除していく――そういう農業のイメージに、心が動いたことは一度もなかったのです。
そんな私が、たまたま、自然農法を実践する農家さんの記事を読みました。草も虫も敵にしない。どこに何が植わっているのか、はたから見たら草だらけでわからないこともある。それまで思っていた野菜の育て方とは、まるで違っていました。衝撃でした。そして、その「わからなさ」が、私にはまるで宝探しのように見えて、ワクワクしたのです。
すぐに、自分でもやってみたいと思いました。やがて、草本だけでなく果樹も育ててみたい、という夢が湧いてきます。きっかけになったのは「協生農法」という考え方との出会いでしたが、実際に私が学んだのは、パーマカルチャーの「フォレストガーデン(食べられる森)」です。野菜だけでなく、果樹もハーブも一緒に育てるその考え方を、ワークショップで学びました。
野菜も、果樹も、ハーブも。高さの違う植物が、森のように重なって育つ場所。単一の作物がまっすぐ並ぶ景色よりも、そんな場所のほうに、私は癒しと、心惹かれる美しさを感じました。これだ、と思いました。
台所で、決めました
「これだ」が、はっきりと「これにする」に変わった瞬間を、私は覚えています。
それは、土地と出会う少し前。台所で洗い物をしていたときのことでした。手を動かしながら、私はふと、心の中で静かにこう決めたのです。
「私は、残りの人生で、憩いの食べられる森をつくる」
大層な決意の場面ではありません。日常の、いちばん何気ない場所での、小さなひとりごとのような宣言でした。けれど、そう決めてから、不思議とシンクロのようなことが次々と起こりはじめました。あの土地との出会いも、その一つです。なんだか、見えない何かに後押しされているような――そんな感覚さえありました。
ひとりで、でも、ひとりきりではなく
この森を、私はひとりで始めました。
誰かと一緒に作るのも、もちろん楽しいと思います。でも、その誰かがいなくなったときに、それを「できない理由」にはしたくありませんでした。いちばん大事なのは、私がどうしたいか。何をしたいのか。それを第一に考えたとき、誰かを待つ理由は、私にはありませんでした。とにかく、やりたかった。というより、「やる」と心で決めていました。
気づけば、ひとつひとつ自分で決めながら、自分の「やりたい」を大事にするように生きてきました。だから今回も、自然とそうしていただけなのかもしれません。
とはいえ、「ひとりで」と言っても、ひとりきりではありません。畑で知り合った仲間がいて、いざというときには手を貸してくれる。そんな環境に恵まれていることに、感謝しかありません。ひとりでできることはひとりでやる。それが基本ですが、助け合える人がそばにいてくれる安心感に、いつも支えられています。
そして何より――これが、思いのほか楽しいのです。
細い竹(笹の仲間)を切ってきて、支柱を組んだり、鹿よけを作ったり。ちょっとした手仕事ですが、私にはこれが、子どもの頃の砂遊びの「大人版」のように感じられます。大人の積み木、と言ってもいいかもしれません。土をいじって、あれこれ手を動かしている時間が、ただ、楽しい。あの頃の砂遊びが、そのまま大人の土いじりになったみたいです。
これから、一緒に
何もない――いえ、たくさんの生きものが眠っている、あの土地。十年以上そこで続いてきた時間ごと引き受けて、これから少しずつ、食べられる森に育てていきます。
完成は、まだずっと先です。果樹が実をつけるまでには、何年もかかります。でも、だからこそ。
何もないところから、少しずつ森になっていくこの過程を、よかったら、一緒に見ていてもらえたら嬉しいです。うまくいったことも、迷ったことも、正直に綴っていくつもりです。
この場所を、「りりぃの杜(Lily’s Mori)」と名づけました。これが、その始まりの記録です。
完成した立派な森ではなく、まだ何もない“とちゅう”から。よかったら、お気に入りに登録して、ときどきのぞきに来てください。いつか、この森に遊びに来てくれても。
これから、どうぞよろしくお願いします。☺
English
I’m starting a food forest on a small patch of long-abandoned farmland at the foot of a mountain in Japan — growing fruit trees, herbs, and vegetables together, with no fertilizer and no chemicals.
I’m doing it on my own, and I’m having fun figuring it out as I go, like playing in the dirt as a child. From bare, overgrown land to a forest you can eat from — I’ll be sharing the whole process here.
If it sounds fun, I’d love for you to follow along.

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